いま求められる“工場経営”を考える
BIZ-Strategy
No.11 生産現場・課題解決の担い手=【生産スケジューラー】に迫る
アスプローバ株式会社 代表取締役社長 高橋邦芳 氏
プロフィール
Introduction
アスプローバ株式会社は1994年日本で最初の生産スケジューラーの専門会社として設立されました。以来、生産スケジューラーの開発・販売一筋に活動を続けています。
同社の製品であるAsprova2003(2004年6月にVer2.0を発表)は、多品種多工程の生産計画を超高速に作成するスケジューラーとして現場の生産管理者から絶大な支持を受け、いまや全世界900を超える工場に導入されています。
今回は、このAsprovaの基本設計者であり同社代表取締役でもある高橋邦芳氏に、Asprovaの製品戦略や経営者としての経営戦略などを、また最後に今後の製造業へ向けての提言などもお伺いしました。
1 人工知能の技術を使ったソフト開発から生産スケジューラー専門会社へ
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--- 最初に、ご紹介を兼ねて高橋社長が製造業に目を向けられたきっかけからお聞かせください。
高橋氏  そうですね、私は15年から20年ぐらい前になりますが、『日経産業新聞』にも「AI・情報」というページがあるくらいの人工知能ブームでして、そのころにエキスパートシステムとかエキスパートシステム構築ツールなどを開発していました。人工知能言語のLISP※1というものを使ってソフトウェアを開発していたんですが、そのときのお客様が200〜300社くらいありましたかね。
 しかし、何年かするとそのブームが去ってしまったんですね。どうしてブームが去ってしまったのかと考えてみると、結局あまり役に立たないというのがだんだんみんなにわかってきたんです。勿論、役に立つ部分で人工知能的な処理が当たり前のものとして今日でも残っています。例えばウェブの検索のようなサービスは人工知能処理をしていますよね。そういったものは残っています。
 私は、当時からエキスパートシステムで要員計画や作業スケジュールなどを支援するツールも開発していたのですが、人工知能ブームを経験してみて、幾つかのポイントを想定しました。
 その一つが、「分野を絞り込む」ということです。対象市場を20候補くらい挙げて、過去の新聞や雑誌などで実用化されている件数やコストメリットなどを基準に評価してみました。それからもう一つ、作業を支援するようなツールでなく「データを入れればすぐに使えるようなもの」でないといけないという点です。大きな市場を狙うのであれば、データを入れるだけですぐ動くという状態のものをつくろうと考えました。その結果、一番上に上がってきたのがスケジューラーでした。さらに工場向けだけに絞り込もうと考えたわけです。それまでにも、大きな航空会社からの搭乗要員計画や運行管理計画などの依頼もありましたが、あえて断って工場だけに絞り込みました。
※1 LISP(リスプ:LISt Processer)
1962年マサチューセッツ工科大学のJohn Macarth教授を中心とする研究グループにより開発されたプログラミング言語。 代表的な関数型言語の一つで、人工知能研究などで広く使われている。1984年には標準仕様としてCommon Lispが定義された。
--- 当時の製造業では生産スケジューラーが実際に組み込まれている工場はあったんでしょうか。
高橋氏  そうですね、そのころシステムインテグレータさんの生産管理システムの提案書などを見せてもらうことがありました。そうすると受注管理とか在庫管理の機能ブロック図みたいのがあって、詳細日程計画というところだけ点線で囲ってあるんです。ここはつくりませんよと。(笑)
 何でつくらないのかなと考えてみると、やっぱり難しいからでしょうね。一般の人から見ると難しいし、そこに手を出したら大やけどするよということで、ある意味では賢いですね。そういう提案書を幾つも拝見しました。この時点でも、生産スケジューラーにかなり自信を持ちましたね。
 私はベースがエンジニアなので、営業で押していくというスタイルではなく、自分たちの最も得意とする技術を難しい分野に投入することで、逆にそれを取り込めれば、会社として優位に立てるのではないかと考えました。
--- 市場を絞り込まれたあと、実際に工場を視て回られたり現場の生産管理者からの情報収集をされたのですか?
高橋氏  製造業に勤めたことがあるかとよく聞かれるんですが、一度もありません。じゃあどうしてAsprovaのような完成度のものがつくり出せたんですかというお話になるんですが、当初LISP版スケジューラを開発していて、それを例えばお客さんに見せる。そうすると、いわゆるLISPというのはメモリーを食うので少ないデータ量しか扱えないんですね。例えばソニーさんの人が来て、「うちは1万品種ぐらいは使えないと全然役に立たない」と言われたら、最低でも10万品種ぐらいは扱えるような設計にします。また、ある工場さんにそれを改良して持っていくと、「いや、こういうことができないと買えないなあ。また出直しておいで」というふうに、門前払いというか、そういう励ましの言葉をいただいて帰ってくる。(笑)そうすると、それをまた改良する。そしてまた持っていって改良する。持っていって改良するということを、売れないんですけど、売れない時期に何度も何度も繰り返して、10年前にやっと「AutoScheduler」(Asprovaの前身)を出荷しました。
--- 御社の沿革を拝見しましたが1994年のAutoSchedulerの出荷後毎年のように新しいバージョンを提供されていますね。
高橋氏  はい、今でも新しい機能の開発を行う場合には、お客様から寄せられる要望書やeメールなどを全部かき集めてリストアップします。Asprova2003の開発の際には、それが約650件ぐらいありました。要望が1行書いてあってもそれを理解するためにはかなりの時間を要します。その650件をすべてチェックして、これはこういう問題だということで、じゃあ仕組み的なソフトウエアによる解決方法はこんな形でやればできるだろうというのを洗い出して、結局323件に絞り込んでいきました。今323件のうちで実現されているのは100件ぐらいです。残り200件ぐらいは未着手の状態なんです。お客様からの優先度の高い順に提供していっています。
--- 御社の売上構成について教えてください。
高橋氏  一昨年度までは保守契約費を含む、所謂パッケージ売上が99%を超えています。といいますのはお客様へのインテグレーションは、すべてパートナー様にお任せしておりました。
 私は経営目標として、人手がかかるものはすべて社外にお願いするという考えをもっていました。従って、パッケージのインテグレーションやサービスをすべてパートナー様で実施していただき、弊社は100%パッケージの研究・開発に傾注すべきと考えていました。パートナー様は、お客様とAsprovaの間に入って、Asprovaの不足しているところや至らないところをカバーして頂いてきました。
 先ほどもいいましたが、Asprovaの開発にはお客様の要望書やeメールなどをもとに分析していますが、直接お客様の声を聞くことも必要と考え、実は昨年度辺りから少数ですが、弊社が直接インテグレーションをさせていただくお客様が出てきています。昨年は3件のお客様に直接インテグレーションさせていただきました。絶対大成功させるという気持ちで社長様と握手をし、絶対成功して成功事例セミナーを開くのでそこで講演してくださいというような関係を作っています。(笑)
 実際、今年4月(22日・23日)に成功事例セミナーを開催し、講演もしていただきました。当然、セミナーにはパートナー様にも出席いただき、今後の展開に役立てていただいています。
--- なるほど、初期のAutoSchedulerの時代から常に現場の声を聞かれているからこそ、このような完成度の高い、しかも現場に支持される生産スケジューラーを提供し続けることができるのですね。
次回は、その現場の声が反映されてきた生産スケジューラーについてお聞かせください。
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2 「見える工場」運営を実現する生産スケジューラー へ続く
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